一定の条件下においては、ガス設備(の一部)の所有権は建物所有者ではなくガス供給業者に帰属するとされた例

平成15年前期東京高裁判決

1 相談前

本件は売買代金請求事件である。ガス供給契約において、ガス設備(の一部)の所有権はガス供給業者に留保されること、ガス供給契約解約時には建物所有者は相当価額で当該ガス設備(の一部)を買い取る旨の約定があり、当該約定の法的効力がガス業者と旧顧客(建物所有者)らとの間で争われた事例。

2 相談後

1審では当該約定は無効としてガス業者が全面敗訴。2審では当該約定の内容を事前に説明された旧顧客については逆転勝訴。

3 弁護士(大越)からのコメント

当事案ではガス設備(一部)が建物に付合(民法242条)するか否かという法律解釈が最大争点となりました。2審では当方の望む結果を導けましたが、当裁判例はそれまでの類似裁判の傾向を転換するものとして、当時は業界内で話題になりました。

建物建築工事について、下請と孫請との間の請負契約が認定された例

平成14年後期東京高裁判決

1 相談前

工事完了し引渡まで行ったが、工事代金が支払われないことを理由として孫請が下請に対して工事代金を請求して提訴した事案。

2 相談後

諸般の事情から原告(孫請)には契約書その他の証拠類が殆ど存在しない状況で、第1審敗訴。第2審では新規証拠を提出し、逆転勝訴。

3 弁護士(大越)からのコメント

契約書等が存在しないという状況はそれだけで極めて不利であり、第1審敗訴もやむを得ない状況でした。そして控訴をするに際し証拠を再検討したところ、工事中の現場事務所内を撮影した写真において、事務所の壁に工事スケジュール表が映っており、その表中に孫請名が明記されており、それが逆転勝訴を導きました。

傷害を受けて死亡した者の遺族側に立って、相手方らに対し損害賠償訴訟を提起した事例

平成13年後期以降東京地裁和解成立複数

1 相談前

複数の相手方らから集団暴行を受け死亡した者の遺族から、相手方らに対する損害賠償訴訟を受任した。

2 相談後

和解成立。

3 弁護士(大越)からのコメント

法的にみて当方の損害賠償請求が成立することはある程度当然ですが、問題は妥当な請求額及び認容額がどの程度であるかということと、確実な債権回収をどうすべきかということでした。というのは、本件傷害事件の当事者はいずれも少年であり、資力に極めて問題があったからです。ただ、殆どの少年は自らの行いを反省し、長期分割で賠償を行うことで和解が成立しました。

証券会社もと従業員らの違法行為に基づく損害について、賠償が認められた事案

平成15年後期和解成立

1 相談前

相談者は個人資産家で、相手方は某大手証券会社とそのもと従業員。相談者はもと従業員の薦めにより金融商品を購入した。真実は、購入後すぐに元本割れして損失が発生していたにも拘わらず、もと従業員は、相談者が当該証券会社の優良顧客であり損失発生の事実が知られれば自身の社内評価が低下することを恐れ、内容虚偽の書面を作成して損失発生を殊更隠蔽していた。しかしやがて隠蔽しきれなくなり、金融商品は大幅に元本割れしていたことが露見した。

2 相談後

和解成立。

3 弁護士(大越)からのコメント

本件では、もと従業員個人と証券会社とを共同被告として損害賠償訴訟を提起しました。前者については不法行為及び債務不履行、後者については使用者責任となります。また損害は、元本割れにつき真実の報告がなされていれば相談者は適時に解約した筈だが、虚偽報告により適時の解約が不能となり損害額が拡大したとして、その拡大損害額について賠償請求を行いました。証券会社はもと従業員が会社の業務と無関係に個人的に行った行為であること、真実の報告がなされれば適時解約したとはいえず、行為と損害との間の因果関係が不存在であるなどとして争いました。 もと従業員の行為は私文書偽造、同行使などの刑事責任が問題となる余地もあり、その点行為の異常性も大きく、使用者責任の成立にはマイナスに作用するという弱点もありました。しかし、根気強く綿密な訴訟活動を展開し、勝訴的和解を勝ち取りました。

職人が請負代金を求めて提訴し、相手方はこれを争うとともに貸金返還等を理由として反訴提起し、本訴は棄却され反訴が認容された事案

平成17年前期東京地裁判決

1 相談前

相談者は老女であるが、知人の職人に小規模な自宅のリフォームを依頼した。工事も完成し引渡もなされたので相談者は現金にて代金を支払ったが、職人は理由をつけて領収書を交付しなかった。その後、職人は請負代金の支払いがないとしてその支払を求めて相談者に対し本訴提起した。

2 相談後

本訴棄却。貸金返還等を求めた反訴についてはほぼ全額を認容する判決がなされ、確定した。

3 弁護士(大越)からのコメント

反訴の貸金返還等の請求ですが、職人は相談者に対し、度々寸借をしつつ、相談者が職人を信用しており借用証書などを一切作成していなかったことから、借金の事実そのものを否認していました。このとおり、本件では証拠資料が始めから不足しており、その点では本訴は有利で反訴は不利な戦いでした。ですが、尋問において職人の主張を徹底的に弾劾することができ、また相談者が日頃利用していた金融機関に対して裁判所から調査を行って貰い、その結果、相談者に対して有利な資料を提出して貰えました。これらの事柄が功を奏し、当方にとってはほぼ満点といえる結果を導くことができました。