不正競争防止法に基づく差止請求権等を被保全権利として、後発類似商品に対する販売差止等の仮処分が認容された例

平成13年前期京都地裁和解成立

1 相談前

先行商品は身障者用の補助器具で、実用新案権や意匠権を取得しており、また販売後市場から高評価を得ていた。その後、後発類似商品が発売された。

2 相談後

仮処分事件の債権者及び債務者審尋において、債務者側が後発類似商品の販売を以降行わないことなどを内容とする和解が成立し、本案訴訟を経るまでもなく問題解決した。

3 弁護士(大越)からのコメント

本件では、債権者は債務者が販売する後発類似商品を購入して詳細な図面を作成したことは勿論のこと、審尋の場で両商品がどれだけ似通っているかを実演するなどして裁判官に丁寧に説明し、そのような熱心な姿勢が望ましい結論を導きました。

金融機関に対する営業妨害的行為を遮断した事例

平成11年東京地裁決定複数・但し弁護士(大越)がかつて別事務所に在籍していた当時の担当事件

1 相談前

金融機関から借入をした顧客らが債務を返済できなくなり、担保物件に対する競売を妨害する目的で徒党を組み、当該金融機関に対する各種の営業妨害的行為を行った。

2 相談後

各営業妨害的行為に対し、個々的に妨害排除のための仮処分乃至民事執行法に基づく保全処分を申し立て、各申立について決定を得、当該決定に基づ

いて妨害排除のための強制執行を行って騒動を鎮圧した。

3 弁護士(大越)からのコメント

これらの営業妨害的行為は数件に及び、また関連する民事訴訟も数件に及びましたが、いずれも丹念に対処し、時間はかかりましたが所期の目的を達成することができました。

金融機関に対する担保権設定登記抹消登記請求を排斥した事例

平成10年後期横浜地裁判決、平成11年後期横浜地裁小田原支部判決・但し弁護士(大越)がかつて別事務所に在籍していた当時の担当事件

1 相談前

金融機関の債務者兼所有者が、当該債務を担保するために自宅に設定した根抵当権設定登記は自身の子供が勝手に書類を偽造し、実印を冒用するなどして行ったものであるとして、その抹消登記請求を求めて提訴した。

2 相談後

請求棄却を勝ち取った。

3 弁護士(大越)からのコメント

本件は債務者兼所有者である原告と、その子供の主張が一致しており、これを翻す客観証拠が乏しかったため、相当の苦戦が予想されました。ところが周到な調査の結果、本件の背後にはいわゆる事件屋が存在すること、当職が担当した訴訟の提起前に、債務者兼所有者の親子間、或いは当該親子らと前記事件屋との間で幾つかの訴訟事件或いは家事事件が係属していたことが判明しました。そしてそれら他事件での当事者の主張を分析し、本件における主張の矛盾点などを突き、辛くも勝訴を得ることができました。

兄弟間で発生した横領等に伴う損害賠償事案

平成12年前期から平成15年前期に掛けて東京地裁判決複数

1 相談前

亡父が残した会社において、長男が社長を継ぎ、長女が経理担当常務についていたが、多額の使途不明金が発覚した。

2 相談後

会社が原告となり、長女に対する損害賠償等を求めて提訴し、一部勝訴した。

3 弁護士(大越)からのコメント

長女は長年経理を担当しており、長男はそれを信頼して一切口を挟みませんでした。それが原因となって長女は確かに多額の資金を横領等していたようです。ただ、長女は経理の経験知識が豊富であり、自らに不利な証拠は残さず、逆に有利な証拠を作出し、却って会社に対し、立替金返還等を求めて別訴を提起するなど、事案は混迷を極めました。本件は会計士税理士らの協力を仰ぎつつ、帳簿類を丹念に読み解き、当方請求額の全額は認容されなかったものの、充分に満足のいく判決を得ることができました。

もと代表取締役らを主債務者とする会社の連帯保証債務について、その成立を争い、勝訴的和解を勝ち得た事案

平成14年後期東京地裁和解

1 相談前

依頼者は民事再生手続により経営再建中の会社である。社外第三者が依頼者に対して債権の主張を行ったが、その内容は、依頼者のもと代表取締役(民事再生申立前に行方不明となる)を主債務者とし、依頼者を連帯保証人とするものであり、そのような内容が記載された公正証書が残されていた。しかし、当該もと代表取締役以外の依頼者関係者は誰もそのような債務の存在を知らなかった。

2 相談後

依頼者が原告となり、当該の自称債権者を被告として債務不存在確認訴訟を提訴し、勝訴的和解を勝ち取った。

3 弁護士(大越)からのコメント

上記のとおり、公正証書という強力な証拠は残っており、しかも当事者たるもと代表取締役は行方不明となっており、依頼者側には事情を知る者が誰もいないという困難な状況から出発しました。しかし、このような事案であれば本来会社が債務負担をするについて取締役会で承認すべきところ、そのような手続はとられていなかったほか、怪しい徴候は幾つか認められ、それらの点を丹念に追求し、最終的に勝訴的和解を勝ち取ることができました。

債権者代位権を理由とする請負代金請求事件において、勝訴的和解を勝ち得た事案

平成16年前期東京地裁和解

1 相談前

依頼者、甲社、乙社とも建築業を旨とする会社である。依頼者はあるとき乙社から、債権者代位権を理由とする請負代金請求訴訟を提起された。ところで、乙社は甲社から依頼を受けてその下請(後述のとおり、依頼者から見れば孫請)としてある物件を完成させたが、甲社が難癖をつけて請負代金を支払わないとして、甲社に対して請負代金請求訴訟(=前訴)を提起し、これに勝訴した。それにも拘わらず、勝訴直後に甲社は事実上倒産し、債権回収不能となった。そこで乙社は、上記工事の元請は依頼者、甲社は下請、乙社は孫請であったところ、甲社は依頼者から請負代金を支払われていなかったとして、債権者代位権を理由として依頼者に対し訴訟(=後訴)提起した。

2 相談後

後訴につき、当職は被告である依頼者の代理人となり、勝訴的和解を勝ち取った。

3 弁護士(大越)からのコメント

事案を補足しますと、問題となる工事について依頼者、甲社(下請)、乙社(孫請)という流れがあったことは事実です。ところが甲社は仕事が致命的に遅く、施主依頼者間の約定工期を守ることが極めて困難になったことから、依頼者は甲社と相談のうえ別業者に応援を頼み、何とか工事を完成させました。そして、依頼者と甲社との間の当初の約定請負代金額を仮に100万円とすると、別業者を依頼したため最終的に請負代金額を30万円にまで減額し(この点、勿論甲社は了解済みです)、依頼者は甲社にこれを弁済しました。この点について乙社は、このような代金減額は乙社の甲社に対する債権回収を困難にする目的で行った「共謀」であると指摘し、そのような「共謀」の有無が後訴の主たる争点となりました。

真実としては、以上の代金減額は正当に行われたもので、「共謀」などとは全くの言いがかりなのですが、上記のとおり乙社は事実上倒産し、乙社代表者も行方不明となったため、当方は「共謀」の疑いを完全に晴らすことに難儀しました。

ただ、例えば上記のとおり依頼者の甲社に対する当初の約定請負代金額を100万円とすると、この訴訟(後訴)で乙社は、甲社から100万円とほぼ同額で請け負ったなどと不自然な主張をしておりました(何故不自然かと言えば、それでは甲社には利益が出ないからです)。そこで疑問を感じた当職は、前訴の訴訟記録を閲覧謄写し、そこでの当事者(甲社と乙社)の訴訟活動に色々と不可解なことがあったことから、実は甲社と乙社こそ「共謀」しており、前訴は仕組まれた「やらせ訴訟」であるとして、乙社を徹底的に糾弾しました。その結果、前記のとおり後訴で当方は勝訴的和解を勝ち取ることができました。

依頼者が開発し販売を予定していたソフトウェアについて、他社から販売差止その他を要求された事案

平成17年前期

1 相談前

依頼者は多角的経営を行っており、自社で開発したソフトウェアの販売を目論み、マスコミに向け大々的宣伝を行っていたところ、他社が、当該他社が既に販売等を行っているソフトウェアと表示面や機能面において顕著な類似性があり、需要者が誤認混同するとして、不正競争防止法に基づき宣伝広告及び販売の差止を請求してきた。

2 相談後

相手方(当該他社)に対し、当方のソフトウェアと相手方のソフトウェアとの相違点を具体的且つ詳細に説明するという作業を書面にて何度か行い、その結果、相手方は沈黙し、この紛争は裁判手続等を経ることなく事実上終結した。

3 弁護士(大越)からのコメント

依頼者はその当時、代表者のカリスマ性から、各方面に様々な話題を提供していた著名企業でした。他方、相手方は我が国を代表する総合家電メーカーであり、相手方が主張するソフトウェアとは、相手方が製造販売するパソコンにプリインストールされて流通していたAV統合ソフトでした。また、相手方代理人も知的財産権の分野では相当に名前の売れている法律事務所であり、これらの状況からすれば、当方(依頼者)はいつ提訴されてもおかしくない状況でした。むしろ、当方は提訴されることも充分に想定してその準備活動も行っておりました。従って、訴訟に至らないで事実上終結したという結末にはかなり驚きました。

本件の争点は非常に技術的な事柄であり詳細は省きますが、要は上記のとおり表示面や機能面で双方のソフトウェアが類似しているか否かということでした。この点、一見すれば類似性がないとは決していえないのが実情ですが、それでも様々な面で相違点がありました。これらの相違点を具体的且つ詳細に説明し、結論として類似性はないか非常に乏しく、従って需要者の誤認混同の虞もまずないとして緻密な反論を行い、結果としてそれが功を奏しました。

依頼者(会社=被告)に対する貸金返還請求訴訟において、当該請求が棄却された事案

平成17年前期東京地裁判決、同年後期東京高裁判決

1 相談前

依頼者(会社)は、Aを通じて原告(控訴人。以下原告)に借金した。その際Aは依頼者の連帯保証人となった。その後、依頼者は債務を完済した。それにも拘わらず、原告は依頼者からの弁済を否定して、連帯保証人であるAとともに依頼者に対して貸金返還請求訴訟を提起した。

2 相談後

原審で請求棄却となり当方勝訴。原告は控訴したが、控訴棄却され、控訴審でも当方勝訴。そしてこの控訴審の勝訴判決は確定し、当方の全面勝訴で終結した。

3 弁護士(大越)からのコメント

事案を簡略化しますと、依頼者は原告から100万円を借り、Aはその連帯保証人となりました。また、Aは依頼者とは無関係に、個人的に原告から50万円を借りました。更に諸般の事情から、原告はAに弁済受領の代理権を与え、依頼者は原告に直接ではなく代理人であるAに対して弁済を行うことを、原告、A及び依頼者の3者で合意し、かかる合意に基づいて、依頼者はAを通じて原告に対し弁済を行い、債務を完済しました。しかしその後、本件訴訟が提起されました。

そして、依頼者がAに100万円を振り込んだこととAが原告に100万円を振り込んだことは容易に証明できるのですが、原告は、①Aに弁済受領代理権を与えた事実はない、②Aから100万円を受領したが、それはA個人の債務の弁済として受領したものであり、③当該債務は完済になり残金50万円はAに対する「過払金」債務となった、④従って依頼者からは全く弁済されていないなどと主張しました。

しかし、Aが原告に金銭交付を行うとすればそれは依頼者の債務かAの個人債務のいずれかの弁済でしかなく、「過払金」があるとすれば依頼者の債務に対するものとしか考えられないのに、この訴訟の請求ではその「過払金」部分が減額されていないという不自然があり、その他諸々の矛盾点が原告の主張には存在しました。そして尋問で当職はそのような矛盾点を丁寧に突いたところ、原告は目に見えて極度に狼狽し、その点が裁判官に対する大きなアピールポイントになりました。

なお本件の真相ですが、依頼者がAを通じて完済した時点でAは自己の個人債務を全く弁済しておらず、その直後に債務整理手続に入りました。そこで、このままでは債権回収不能になると危惧した原告は、弁済金は依頼者に対する債務についてではなくAの個人債務についてのものであると主張し、資力のある依頼者から二重弁済させ、Aに対する債権の回収をも狙うという悪質な動機に基づくものです。そして、そのような背景事情についても当職は丹念に裁判所に説明し、その結果勝訴に至りました。