中小企業における企業承継を円滑にした事案
平成14年後期東京家裁審判
1 相談前
依頼者(被相続人)は中小企業の社長であり、当該会社の役員は依頼者、その妻及び依頼者の甥で典型的な親族経営である。依頼者は甥に当該会社を継がせることを強く希望。なお、依頼者には4人の娘がおり、いずれも結婚している。
2 相談後
依頼者の推定相続人全員が遺留分放棄を行い、それとともに依頼者は当該会社の株式を含む全ての資産を甥に包括遺贈する旨の遺言を作成した。
3 弁護士(大越)からのコメント
被相続人の生前の相続放棄はできませんが、遺留分放棄は可能です(民法1043条)。本件では甥に会社を継がせることには被相続人間で強い異論はなく、相談事項の解決に極端な障碍はありませんでした。すると逆に、単に甥に資産を包括遺贈する旨の遺言を作成するだけでも良いのではないかとの考え方もあり得ますが、矢張り自らの死後、遺留分減殺請求などで紛争が発生することを依頼者が恐れましたので、上記のような解決策に至りました。
相続財産管理人制度を利用した事案
平成15年後期千葉家裁審判、平成18年後期千葉家裁審判
1 相談前
依頼者は幼いときから親類の女性に可愛がられていた。その女性は結婚をせず身よりもなかったことから、晩年は依頼者がその女性の療養看護に誠意をもって務めてきたが、その女性は相続人がないままに亡くなった。
2 相談後
依頼者が申立人となって当該親類の女性につき相続財産管理人選任を申し立て、管理人が選任された(民法952条)。次に、依頼者について特別縁故者に対する財産分与申立を行い(民法958条の3)、結果として相応の相続財産が依頼者に分与された。
3 弁護士(大越)からのコメント
本件のような事案では、以上の手続を踏むことは教科書どおりと思われます。問題なのは、当該親類の女性は少なからぬ資産を保有しており、依頼者とともに行った資産調査が過去の事実関係の調査にも及ぶものであり、かなり難儀しました。
裁判外での交渉を根気よく続け、遺産分割に関する合意を成立させた例
平成18年後期遺産分割協議成立
1 相談前
依頼者(姉)には妹がおり、この2名が相続人である。依頼者の母は生前遺言を遺しており、その内容は姉妹を平等に扱うものであった。ところが母の死亡後、当該遺言作成の数年後に作成されたという第2の遺言が妹から提出され、その内容は妹に極端に有利なものであった。
2 相談後
当方は第2の遺言の効力を争う姿勢をも示しつつ、予備的に遺留分減殺請求を行った。そのうえで相手方と根気よく裁判外での交渉を行い、その結果、ある程度納得できる内容の遺産分割合意に至った。
3 弁護士(大越)からのコメント
裁判手続を利用しなかったのは、それを行うと相手方が感情的になり、紛争が長期化する虞があったからです。また、姉妹は極めて感情的に対立しており、相手方からの言い分をダイレクトに伝えると火に油を注ぐ結果になることは明らかであるため、依頼者を説得しつつ望ましい解決を模索することに腐心しました。